大人は見えない

しゃかりきコロンブス

今年読んだ本の話

「2018年に読んだ本の話」ってタイトルにしようと思ったけど、それだと「☆2018年に発売された本をめっちゃ読んでるトレンドばっちり抑えたイケてるチャンネー☆」だと勘違いされそうなので、変えた。今年発売の本ばかりではない、ということをお忘れなきよう…。大々的に宣伝されてる本って逆に(何の?)買わなかったりしちゃうアマノジャクなのでそのへんは頼みます。

 

 

 

<<ちょー面白かった!部門>>

得るものがあったとか、人生観が変わったとかではなく、単純に面白くてページをめくる手が止まらなくて夜も眠れなくなっちゃったよ!っていう本たち。

 

・絶対正義/秋吉理香子

www.gentosha.co.jp

 

夏に発売された『ガラスの殺意』もめちゃ面白かったです!!『暗黒少女』、『聖母』、『自殺予定日』『鏡じかけの夢』も今年読みました。『鏡じかけの夢』は連作短編集?みたいで特に好き。ミステリーって、一つの結論=犯人にたどり着くことがゴール、みたいなところがあるからあまり好きじゃなくて、今まで読んできませんでした。でも、何かの媒体で『絶対正義』がおすすめされてて、読んでみたらちょーおもしろくて!!ガンガン読み進めてしまいました。この作品がきっかけで、夏頃から秋吉作品ローラー作戦が敢行されました。

どうして?誰が?とかももちろん気になるんだけど、それ以上に女子の心理描写が絶妙で、わか~るわかるよ君の気持ちⒸ小池徹平。真面目過ぎる範子に昔は助けられたこともあったけど、時々それが鼻につき、挙句の果てには自分に迷惑をかけてきて…くっそ~っていう。自分の中の正義に対して、どこでどう折り合いをつけて生きていくか?を考えさせられました。

 

 

・R帝国/中村文則

R帝国|単行本|中央公論新社

 

長編ディストピアもの。今までの中村文則さんの作品とはちょっと違って、純文学よりもエンタメ小説に近いなと私は感じました。『去年の冬、きみと別れ』、『教団X』、『私の消滅』、『土の中の子供』あたりを読んでいるのですが、全部「もう読みたくない…辛い…みんなでシェアハピしようよ…」ってへこんじゃってたのが、『R帝国』では、「早く続き読ませろおおおおおおお!」で(不謹慎かもしれませんが)ワクワクが止まりませんでした。HumanPhone、公開処刑沖縄戦などなど、現実と虚構の線引きがあいまいな世界観と、何百年後にはありえそうな他の星からの侵略。何を信じていいのかわからないまま読んで、絶望しての繰り返しでした。それでもおもしろかった!

中村さん自身が「小説でしか表現できない作品にした」と語っているのに難だけど、読んでる最中はずっと『ブレードランナー』とか『オール・ユー・ニード・イズ・キル』が浮かんでた。洋画SF好きな人はハマりそう。

賛否両論あるみたいだけど、「作品に作者の思想が投影されている」とはまったく思わない私には無問題でした。

 

 

・恐怖小説キリカ/澤村伊智

『恐怖小説 キリカ』澤村伊智|講談社ノベルス|講談社BOOK倶楽部

 

『ぼぎわんが、来る』映画化に伴い、読み始めたら止まらなくなった澤村伊智先生…!!!『ししりばの家』、『ずうのめ人形』を読んで、たどりついた『恐怖小説キリカ』。(なにも考えてなかったけど)この順番で読んでよかった~!自分で自分を褒めたい!小説幻冬で不定期連載の『怖がらせ屋』も読んでます。わたしのホラー小説への扉を開けてくれました!ありがとう澤村先生!そして『来る』製作委員会!そして我らが岡田准一

この作品は何を言ってもネタバレになるタイプというか、一言でこうだよ!って言えないタイプの作品です。ってか怖くて感想書けないわ。殺されたくない。読んで!!!頼むから!!!買って!!!!!殺さないで!!!!!

それくらい、リアリティがありすぎて怖い、ということです。恐怖小説の名をほしいままにしてる。今までの作品の中で一番リアルなのに、一番グロいってのがまたすごい。

 

 

・なくなりそうな世界のことば/吉岡乾

www.sogensha.co.jp

 

『誰も知らない世界のことわざ』、『翻訳できない世界のことば』の仲間。その2冊が注目されがちだけど、『はかりきれない世界の単位』も面白いのでおすすめ。で、一番最近読んだのがこれです。

単純に、「言葉って減るんだな」ということを自覚させられて、またその消えそうな言葉たちが消さないで!って叫んでいるような気がして、じわっと来ました。「死語」ってひとまとめにするのは簡単だけど、そこにはたくさんの意味や気持ちが込められていたんだろうなと、消えそうな言葉たちに思いを馳せてしまいました。大切なのは固有名詞だけじゃないんだな~。いつかこの本みたいに、消えていった言葉たちを懐かしむ文化ができたら供養になるのかな、と思ったり。

このシリーズの作品(創元社の本たち)、面白いんだけどサイズ的に持ち歩きに大変苦労しますので、そのへんの改善は検討していただきたいです…。でもこのサイズと絵がまた良いんだよね~どっちも買うのでデカい版と文庫版出してください!

 

 

 

<<喰らっちゃった部門>>

私が本とか映画とかドラマとか、ストーリー性のある作品(芸術と言うのか?)に求めるものは、「自分にデフォルトで備わっていたのに、今まで気付かなかった感情を呼び起こしてくれること」です。涙が頬を伝うとか、顎が外れるくらい笑うとか、そういうのは幾度となく経験してるし、自力で言葉に出来るし表情でも出せます。でも、自分のうちに秘めていたマグマ的なものがぐらっとゆらいだときのあの感じ、そしてその状態を言葉にするのってめっちゃ難しくないですか?わたしの語彙力がないというのも相まって、「なにこのもやもや!!!!」ってのが日常茶飯事です。

後味が気持ち悪い作品は、自分に無いor言語化できない感情を動かしてくれた、と思うわけです。特に本でそれが起きると「言いたかったこと言語化できてる…誰にも分らないと思ってたのに…悔しい…」と、小一時間嫉妬に狂い、のたうち回ります。

 

 

・リバース&リバース/奥田亜希子

 

最新作『青春のジョーカー』、みなぎる青春に圧倒されました!出されている作品全部読んでます。みんながなんてことなく過ごす日常の中にある、消えないもやもやとか、自分にとっては大問題なこととか、そういう「見えない自分の中のわだかまりとの戦い」を書くのがめちゃうまだな~と思います。

ティーン誌でお悩みに答えるろく兄と、地方に住む女の子・郁美が、ろく兄のお悩み相談コーナー「ハートの保健室」を通じて交差するストーリー。

どんな聖人でも生きているうちに一度は誰かを傷つけ、傷つけられてしまう。それをどうにか癒しながら、慰めながら、でも忘れないように生きなきゃいけなくて…。わかっているけどできてないことを言語化してくれた感じ。嫌な思い出がフラッシュバックすることもあれば、過去の自分を傷つけるような考えが浮かんだり、勝手に植え付けられた差別意識が行動に出ちゃったり、人間の脳って本当に都合がいいなふざけんな!!全部受け入れて苦しみながら生きていこうと、背筋が伸びる作品でした。

 

 

・もう生まれたくない/長嶋有

https://www.amazon.co.jp/%E3%82%82%E3%81%86%E7%94%9F%E3%81%BE%E3%82%8C%E3%81%9F%E3%81%8F%E3%81%AA%E3%81%84-%E9%95%B7%E5%B6%8B-%E6%9C%89/dp/4062206277

 

www.shosetsu-maru.com

 

最近読んだ『問いのない答え』、めちゃめちゃ時間かかったけど読んでる時間がすっごく楽しくて、終わらないで!と思ったほど。まだ全作品は読めていないですが『愛のようだ』、『三の隣は五号室』など最近の作品は読んでいます。

芸能人でも、顔見知りでも、親しい人でも、訃報は訃報で、みんな同じ価値があるのに、情報として消費されるだけの訃報もあって。結局、人と共有できるのって気持ちじゃなくて、気持ちを言語化した「情報」だけなのかも…と落ち込みました。まさに「喰らった」。登場人物のひとり・春菜は夫の葬式で一言しか発せなくて、それは本当にそう思っている言葉なのに、いろんな解釈をされたりとか。あるあるだなあと思いつつも、自分もやりがちだなあと反省したり。

そしてインタビューにもあるけど、長嶋さんの作品って固有名詞がたくさん出てきてめちゃくちゃヒップホップ!情景が浮かびやすいし、些細なもので縁取ることで作品の本質が浮かび上がる感じがまさに!!わたしのヒップホップ元年に、長嶋さんの作品はなくてはならない存在でした。

 

 

・美しい距離/山崎ナオコーラ

www.amazon.co.jp

 

www.huffingtonpost.jp

 

激今更。最近読んだ中で一番ズタズタにされた。感動しつつも、くssssっそおおおおおお~こういうことよ~とドタバタしてしまいました。山崎ナオコーラさんの作品は実は全然読んだことがなくて、結構前に『ボーイミーツガールの極端なもの』ってタイトルがベボベっぽいなという理由だけで読み、『美しい距離』はそれ以来の2冊目でした。最高すぎて最新作『偽姉妹』買いました。早く読みたい!

入院中の妻とそれを支える、と言うとニュアンスが違う気がする…支えるではないんだよなあ、一緒に生きる夫、と言えばいいのだろうか。とにかく、この夫婦の『美しい距離』がいつまでも続けばいいのにな、いや今も続いているんだな、という作品。 

大事な人の命に関することって、相手に対する思いよりも、相手の選択を尊重しなきゃだけど、実は難しい。その葛藤や巡り巡る思考回路が地の文で丁寧に語られていて、決して口数は多くないんだけど、妻に対して心からの愛情を持っている夫であることが表現されていて、すんばらしいなと思いました。

 

 

『美しい距離』を読んで思ったことをひとつ。

私は自分の葬式をフェス形式にしたいと常々思っているのですが、友達に言うたびに引かれるし、それより結婚式のこと考えろよ!とツッコまれます。でも、結婚式は夫と2人のことじゃないですか。だからちょっとは譲歩しなきゃいけない部分も絶対に出てくる。そのために話し合いも積まなきゃいけない。簡単に言うとクソめんどくさい。

でも葬式は、私というイチ社会人が最後にやりたいことをやっていい場所(と思っている)ので、私との関係性も性別も職業も、何も気にすることなく楽しみだな~☆というメンタルで来てほしいんです。かわいそうとか、早死にだとか、結局結婚しなかったとか、そんなことどうでも良くて、ただただ、私の好きな人たちが私のどーでもいい思い出話とかをして、笑ってほしいのです。『美しい距離』というよりは、私の自己顕示欲スゴイって話っぽいですが、この作品を読んで、葬式フェス計画が初めて肯定された気がしたのです。葬式フェス計画の企画書、ここに書いておいたらそれって遺言として効力発揮するのかな?

 

 

思いつくままに書いてたら2018年発売の本について一冊も書いてない…?それはまた来年。