大人は見えない

しゃかりきコロンブス

マテリアルクラブ『マテリアルクラブ』

もう本人たちが全曲解説してたり、具体的に「こういうことなんです!」と話されているので、軽めに感想をば。

押忍!

 

Material Club

Material Club

 

www.jvcmusic.co.jp

 

こんなに骨がぐにゃんぐにゃんな作品作れるんだ…無脊椎動物みたい、と思いました。バカな感想だけど、本当にそう思ったの!生きてるんだけど、背骨がしゃんとしているわけではなくて、ふにゃふにゃ。見えない芯が通っているような気もする(見えないときもある)。聴くたびに新しい発見がある作品だと思います。全曲感想レッツゴ。

 

 

 

#1 Nicogoly

まさに、マテリアルクラブがやりたい「音楽の煮凝り」。自己紹介ソング的だけど、あっこびんがラッパーの彼女という架空の設定なのが面白くて、絶妙に非現実み。「雑味すなわち経験値」というフレーズにハッとさせられる。ナリハネさんのピアノ好きです。この曲にエレガントさを刺している印象。ありがてえ、頭上がらねえ!

 

 

#2 00文法(ver.2.0)

先行配信されていた『00文法』よりもアレンジが追加されて豪華になってる!あっこびんのベースのエグさがより際立っています。なにこれ変態じゃん。『Last Love Letter』のイントロ聴いたときの「やりすぎ…」ってドン引きしたヤツ再来してしまいました。こいちゃんの歌い方も奥行きがあって好きです。最後の抜きも好き、名残惜しさ。

 

 

#3 閉めた男 feat. 吉田靖直(トリプルファイヤー)

なああああにこれ(笑)飲み会で録った面白い音をサンプリングして作った、って、こんな面白いものできる?てか「カーテンを一回閉めた男として」「カーテン閉まったぞ」って何??後ろで鳴ってるトラックがかっこよすぎてあれ?これかっこいい曲なのか?ってなる。考えれば考えるほど頭がこんがらがるから、考えたら負けな一曲。とにかく音を耳に入れること優先(笑)ゆきのちゃんの『Curtain』とリンクしてるのかな?と思ってたけど、そこのつながりは偶然だったらしくて驚き。

 

 

#4 Amber Lies

全編英語詞。きれいに流れるような曲かと思いきやトラックがかっこよくてギャンギャン。インチキ英語バージョンもそれはそれで面白そうだから聴いてみたい。「歌うときの体の使い方が違う」ってこいちゃんが言ってたけど、まさに。破裂音がそぎ落とされていてなめらかで、でも打ち込みの音によってただのさらさらした曲に成り下がらない。

 

 

#5 告白の夜 feat. TOSHI-LOW(BRHMAN/OAU)

打ち込みのいろんな音がとしろうさんのことをすべて肯定しているような、怖さと静けさ。ムーディーなベースラインがかっこいい~。コーラスがめっちゃ好きです。ナリハネの鍵盤がチャーミングで、きっと生音であろうオケ部分はきっちりかっこよく締めて、最高の塩梅。抹茶プリンにレモンソースかけるやつみたいな曲。あれちょーうまいよね。

 

www.kuriharasanchi.com

 

 

#6 kawaii feat. 岸井ゆきの

大好きな大問題作。ずっと何言ってんだ。売れてる女優さんに何言わせてんだ。んで後ろのトラックかっこいいな意味わからん…。トラックはかわいくない、ごりgggggggっごりにかっこいい。かっこいいけどどこで使うんだこのフレーズ、っていう音のオンパレード。マテリアルクラブじゃなきゃ絶対に出来ない曲だと思います。ていうか思いついても「これなんなんだろう…」ってお蔵入りしちゃうと思う。ゆきのちゃん、これきっかけでNHKスペシャルのナレーション仕事とか来そう。各所、よろしくお願いします。

 

 

#7 Material World feat. Mummy-D(RHYMESTER),Ryohu(KANDYTOWN)

まずDさんとりょふちんが一緒に歌うというヒップホップドリーム!!しかも詞がめちゃくちゃいい。マテリアルクラブの神髄というか信念というか、ヒップホップの根源にもつながっているようなフレーズもあって。それがしっかり咀嚼できている人たちによる客演なのでそりゃ最高に決まってますわ。初聴きのときマジで泣きそうになりました。後ろでなってるアコギが切なくて、それも涙腺刺激する。「すべては素材さ 無駄なんてないさ すべては出会いさ 見逃すな そのときめきとひらめき」こんなん素直すぎて泣いちゃう。

 

 

#8 Curtain feat. 岸井ゆきの

桐島、部活やめるってよ』を全部朗読してほしい。みずみずしさえげつなくて溺れそうだよ。最後に一発録りしたのが採用されるとか、ほんとこのアルバムって実験的だけど(だからこそ?)、突拍子もないことが起きて妙にドラマチックになってるなあと思います。「波が、寄せては返す」からの次曲へのつなぎは天才としか。あとから足すことを決めたらしいけど、これがあることで次曲が超絶押忍になっています。

 

 

#9 WATER

マテリアルクラブ最初の一曲だそうで、打ち込み要素抑え目で(というか、楽器の演奏も作曲もできる人が作った打ち込み曲って感じ)、間奏のバンドサウンドはバンドマンのそれです。ヒップホップになじみのない人はこの曲が入りやすいかもしれないです。こいちゃんのさらっとした歌い方が水みがあって好きです。でも歌詞は結構攻めてる印象。「カルト越えてオカルト」「オカルト越えてカルト」はまさにこいちゃんみ。

 

 

#10 New Blues

大名曲きた。ここまでむちゃくちゃふざけたりかっこつけたり裸で本質歌ったりしてきたところに、最後に名曲がずどーンと腰を据えて待っています。まさに「ブルースなんだけど、未来に向けた新しいもの」で。ラッパ隊フロムSANABAGUN.も最高。まだまだ素材はいくらでも吸収できるし、それを基にモノを作れるし、表現する場、まさに『マテリアルクラブ』があるよ!っていう。押忍!!!!

 

 

まさにこれを書いてたらシンラのこいちゃんインタビューが配信されました。

www.cinra.net

 

「確かに」の333乗。首もげる。

なるほどヒップホップの「何言ってんだ感」と「自分のこと歌ってるかのような具体性」の共存の理由は、こいちゃんの言う固有名詞のおかげなのかもな、と思いました。

この前のヨブンのことで朝井さんが言ってたけど、「大人になると書くことが減る。大きな出来事の記録はするけど、日常で起きる小さな心の機微はいちいち書き残さない」ってのも、ここにつながるかな、と思ったりしました。子供のころは大切に拾っていた素材も、大人になってからは拾わなくなったり、見ないふりをしていたりして。でもそこの、小さなときめきとひらめきを見逃さず、素材として、面白おかしくこねくり回していく。時には痛い痛い思い出も晒したりして…。ファーストアルバムからたくさんの友達を巻き込んでキャッキャしてたら、マテリアルクラブにみんな入りたくなっちゃうんじゃないかなあ(笑)マテリアルクラブ経由で、こういう音楽もあるんだ!やっていいんだ!って、新しいそれぞれの「クラブ」みたいなのができたら、もっと日本の音楽界が楽しくなりそうです。

 

 

正直、チャットが打ち込みを始めた時に、まだまだバンドしか知らない私はものすごい不信感があって。『共鳴』とか『変身』あたりのアルバムは当時あまり聴けなかったんです。バンドマンが打ち込みとか意味わからん、という凝り固まったマセガキだったわけです。ナマ言っててすいませんでした。でもどんどんヒップホップなりジャズなりアイドルソングなりアニソンなり、いろいろなジャンルに手を出すにつれて、生演奏の良さを改めて感じたり、オケじゃ補いきれない部分もあることとか、わかり始めて。今となっては、「この曲あのジャンルの要素も入ってるやんけ…誰から影響受けてるんだろう頼む宇野さん鹿野さんインタビューして~」と、他力本願になったりしているわけです。まさに、ベボベとチャットを長らく聴いてきた成果かな、と自分では思います。青春万歳!

 

 

あとこの刺繍ジャケね!狂気の沙汰としか思えない。天才です。鬼畜ですが、刺繍ジャケ盤も欲しいです。